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中島 通さん |
ドライバーが高齢化している個人タクシー業界で、軽度認知障害(MCI)による事故を未然に防ごうとする動きが活発になっている。ちょうちんマークでおなじみの日個連東京都営業協同組合(以下日個連、豊島区・中島通理事長)は2013年12月からMCIの早期発見が可能なチェックテストを導入、タクシードライバーに助成金を出して診断テストを受けるよう促している。
日個連が導入したのは、電話による10分程度の質問に答えるだけで判別できる軽度認知障害スクリーニングテスト(MCIS)。米国で研究開発され、すでに50万件以上の利用実績を持つといわれる。この検査は、例えば(1)色や景色など関連性のない言葉を10個聞き、それを3回復唱(2)次にカバやワニ、ライオンなどの動物を挙げて、このうち共通性のない動物を答える(3)その上で、最初に挙げた関連性のない単語を思い出して復唱する—というテストだ。認知機能チェックテストの日本語版をティーペック(株)(台東区)が(株)ミレニア(中央区)と業務提携し、企業や団体、自治体、医療機関などに販売を開始している。
運転免許の更新時、75歳以上なら誰でも認知機能検査を義務付けられている。「個人タクシーのドライバーは平均年齢が年々高くなっているので、一般のドライバーよりも早い段階で、テストを実施することにした」と中島さん。傘下の江戸川支部がその前にMCISを導入しており、「手軽に97%の高い比率でMCIが判別できる」ということが分かって日個連も導入を決めたという。
日個連では、MCIS1回3300円の費用のうち1000円を助成、また傘下の30支部からの助成も合わせるとチェックテストを受けやすくなっているという。これまでに約50人がMCISを受けている。
タクシードライバーは、車両の量が多い都内の交通事情や一般のビジネスマンとは違う時間帯で働くためストレスもたまりやすく、MCIが事故に結びつく可能性がある。
実際に、MCIが原因で事故が起きたというケースはまだ報告されていないが、「MCIを早期に発見し、適切な予防や治療を行うことで認知症の発症予防や進行を遅らせたりすることが可能」と中島さん。
MCIは痛みなどの症状が現れないため「まだ、大丈夫だろう」と思いがち。日個連では、周囲のドライバーがMCISを受けることで「じゃあ、自分も受けてみようか」という気持ちになる効果を期待している。
無呼吸症候群検査の組合も
一方、でんでんむしマークを掲げる個人タクシー、東京都個人タクシー協同組合(東個協、中野区)では13年11月から脳ドック、同年12月から睡眠時無呼吸症候群の検査を実施している。
東京都の個人タクシーのドライバー数は約1万5000人。このうち日個連が約6000人で、東個協約9000人。個人タクシー事業者の年齢構成(右のグラフ)は60歳から64歳が全体の24.9%を占め最も多いが、法人タクシーも平均年齢58歳と高くなっており、高齢化に伴う健康と安全の問題は個人も法人も共通している。
MCIとは、日常生活を送る上で支障をきたす程度ではない認知障害のこと。過去の体験を思い出すことや同時にいくつかのことに注意を払う、日常生活で判断や計画をする能力が低下するといわれる。65歳以上の高齢者で認知症にかかっている人は推計462万人(12年、厚生労働省)おり、このほかMCIが約400万人。
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なお、一般個人向けMCIチェックテストの問い合わせはティーペック(株)Tel.03・3839・1105 |
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