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ある葬儀社フェアで話をする古宮さん。落語家に弟子入りしているだけあって、遺言や相続の落としどころはよく知っている |
「落語を通じて遺言や相続をもっと身近に感じてほしい」—。そんな気持ちから落語家、桂茶がま師匠に弟子入りした古宮努さん(42)。「笑って相続や生前対策を考えよう」と提案する異色の司法書士だ。最近では、整理・収納アドバイザーとして、片付けができない人たちのために整理の仕方のアドバイスもしている。
噺家の師匠と共演も
セミナーにはいつも着物で出演している古宮さん。着物を着るだけで法律関係のセミナーにありがちな堅苦しさが和らぐという。
「最初にスライドなどを使ってみなさんに相続の基礎知識について話しています。落語家のノリでみなさんの事情を聞いてみると相続人を間違えていたり、嫁には相続分をやりたくないと言い出す人がいたりと、いろんな話が出てきます」と古宮さん。来場者との距離感が近くなって、より本音も出やすいようだ。
それにしてもなぜ、古宮さんは落語調で遺言や相続の話をしようと考えたのか。それは、古宮さんがセミナーで講演中に専門用語を使い始めたとたん、一部のお客さんが眠ってしまうという経験をしていたから。「何とか眠らずに、喜んで聞いてもらえる方法はないものか」と考えた末のことだったという。
「参考までに、成年後見をネタにしているある落語家さんの高座を拝見したのですが、正直言って専門的なことが分かっていないなと—。それなら私が」と思い立ったという。
といっても、古宮さんはそれまで落語は好きでも、人前で演じたことはなかった。「誰かに弟子入りした方がいい」と考え、知人から紹介してもらったのが茶がま師匠。古宮さんの熱意に負けて、「いいよ、じゃあ教えるよ」と入門を許され、桂茶柱という名前ももらった。
現在、茶がま師匠とは、金融機関が主催するセミナーなどで共演することが多い。1部は茶がま師匠の落語、2部は茶がま師匠と古宮さんの掛け合いで相続や成年後見の話をしている。「最近、よく話しているのがエンディングノートの書き方。これを書いておかないとぽっくりいけないんですよと話すとみなさん、う〜んと納得してくれます」と古宮さん。
「心の整理」の前の「物の整理」も提唱
遺言やエンディングノートの書き方から発展したのが整理・収納についてのアドバイス。「自分から司法書士に相談に来る人は大体、家の中の物が片付けられている」と気付いた古宮さん。「遺言などは心の整理。その前に物が片付いていないと」と考えたからだ。
実際のセミナーでは、「朝昼晩使う食器はほとんど一緒でしょ。それなら食器棚は3段もあれば十分では」とか、「自分が亡くなるまで家にあるコンビニやスーパーのビニール袋は困らないはず。いいかげん捨てたら」といった内容を話している。「よく言う“断捨離”はなかなかできない人が多い。だから私は、物を捨てなくていいから、普段の生活で使わない場所にまとめて置くようにしたら、と提案しています」
遺言や相続などの相談は、最寄りの役所や司法書士などの専門家へ。 |
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