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新年度の介護報酬改定のポイント FPの長沼和子さんに聞く |
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「これから各都市の介護力格差がはっきり出てくる」と予想する長沼さん |
“在宅”へシフト、「受け皿不足」の声も
2012年度介護報酬改定などで、介護保険制度の今後の方針として厚生労働省が打ち出しているのが、在宅を重視した介護支援体制。小規模多機能型生活介護などの地域密着型サービスを利用して、高齢者が長年住んできた地域で暮らし続けられるように支援していこうというのが狙いだ。しかし、そうした地域密着型サービスが、「受け皿としてどれだけあるのか」という疑問もある。そこで、介護保険に詳しいファイナンシャル・プランナーの長沼和子さん(NPO法人くらしとお金の学校代表)に聞いた。
「24時間対応」新設
改定される介護報酬のポイントの一つは、定額制による24時間対応の訪問介護・看護サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)が新設されたこと。今まで利用回数増に伴い、利用者の負担が増えていたが、看護師やヘルパーが高齢者の自宅を何回訪問しても料金を気にせずに利用できるという。
このほか、認知症の重病者やみとりで高齢者を受け入れた老健(介護老人保健施設)などには介護報酬を加算し、緊急受け入れを施設に促している。
こうした在宅サービスを重視した介護報酬設定になったのは、高齢者人口の増加に伴い介護保険制度の運営が厳しさを増していることが背景にある。
国立社会保障・人口問題研究所では、30年には約3人に1人が65歳以上の高齢者になると予想。また、厚生労働省では07年の医療保険の経済規模が約34兆円、介護保険は約7兆円だったが、25年には医療保険が67〜69兆円に、介護保険も24兆円規模に増えると予想している。この高齢者激増に対応した病院や介護施設などの不足が予想されるため、たとえ認知症などが重度の人でも在宅で介護する体制に持っていこう、というのが今回の改定の狙いといわれる。
その24時間対応サービスを担うのが地域密着型サービスと呼ばれる、地域包括支援センターや小規模多機能型生活介護、夜間対応型訪問介護、グループホームなどである。
しかし、「こうした地域密着型の介護サービスがどれだけ地域に根付いているのか」と疑問を呈するのが長沼さんだ。長沼さんらNPO法人くらしとお金の学校(TEL.048・851・5232)スタッフは、このほど東京都や神奈川県など首都圏にある介護施設数を調べ、65歳以上の人口1万人に対して施設数が何カ所あるかを割り出してみた。
東京は“整備途上”
すると在宅介護に必要な地域密着型サービスは東京23区で、地域包括支援センター1.73、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)1.41、認知症対応型通所介護1.60、小規模多機能型居宅介護0.27、夜間対応型訪問介護0.05、地域密着型介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)0.02、地域密着型特定施設入居者生活介護(軽費老人ホーム・ケアハウス)0.01という結果が出た。これらの数字を足した指数は5.09。
この指数をほかの首都圏主要都市と比較してみると、横浜7.40、川崎7.59の神奈川県2都市よりは低いが、さいたま市の3.74よりは高いという。
「(施設整備が進んでいる)横浜市や川崎市は24時間対応の訪問介護・看護サービスを実行できると思うが、高齢者人口に対する地域密着事業者数が少ない東京やさいたま市などは当面できないのではないか」と長沼さんは予想。「国は団塊の世代が70代後半になる25年をめどに地域包括ケア体制をつくれればいいと考えている。その間に地域密着型事業を整備していこうということでは」と話す。
ただ、現状では介護を支える人も施設も足りない。将来はさらに状況は厳しくなる。「私は40〜50代の人たちには有料老人ホームに入れるように貯金しなさいと勧めている。それだけの資金が無かったら地域密着型サービスが進んでいる九州や四国、中国地方などに移住するか、フィリピンなどの海外移住を考えてもいいのでは」と長沼さん。老後を過ごす町をどこにするか自ら選択する時代になっていると指摘する。 |
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