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シニアの旅 自分流で! 素泊まりタイプのロードサイドホテル紹介 |
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「ファミリーロッジ旅籠屋」宮島SA店の外観 |
新たな交流のモデルケースに
「行きたい時に行きたい所へ行き、好きな時間に好きなものを食べる」—。そんな気ままなドライブ旅行を楽しんでほしい、と提案する宿泊チェーンが注目を集めている。これまで旅行会社が企画した旅行を経験してきたシニア世代の中でも、定年後に余裕のある時間を使って自分好みの手作り旅行を志向する人たちが利用している。
甲斐 真さん |
その宿泊チェーンは、16年前に日光鬼怒川に1号店を開業した(株)旅籠屋(はたごや=本社・台東区)。現在、全国に34店舗の「ファミリーロッジ旅籠屋」を展開しており、昨年11月には、山陽自動車道内に宮島SA店(広島県)をオープンした。旅費負担を軽くすることができる高速道路内への店舗開設はこれで3店目だ。
同宿泊チェーンの特徴は(1)食事などはなく泊まるだけ(2)立地場所は郊外の幹線道路沿いなどで、移動手段は車か自分の足(3)その代わり宿泊料金は低めで、親子4人程度で1室1万500円、2人使用・同8400円(レギュラーシーズン)。各店舗の部屋はどこも同じスタイルで25平方メートル(約15畳)の広さの部屋にクイーンサイズ(幅1.54メートル)のベッド2台が設置してある。浴室付き。
「週末の利用は子ども連れの家族が多いが、平日はビジネスマンなどの利用が多い」と話すのは社長の甲斐真さん(59)。ただ、最近は、「平日に50代〜70代の夫婦の利用が目立つようになってきた」という。こうした年代の夫婦の多くは、これまで海外旅行を数多く経験していたり、リゾートホテルや温泉旅館を利用した経験のある旅行者で、既存のホテルや旅館のサービスに満足できない人たちだ。
甲斐さんは1978年に竹中工務店子会社の日本ホームズ入社後、(株)ATCなどを経て94年に(株)旅籠屋を設立する。独立のきっかけとなったのはアメリカに留学した友人の話だった。
その話の中で甲斐さんが興味を持ったのは、「アメリカは安くて気軽に泊まれるモーテル(自動車旅行者のための簡素なホテル)がたくさんあって時間に束縛されず重宝した。日本にはそれがないのでドライブ旅行がしにくい」とこぼしたことだった。「日本もすでに車社会なのだからモーテルがはやるのでは」と思った甲斐さんは、実際にアメリカのモーテル事情を見てみようとアメリカを旅行することにした。アメリカに行ってみると、友人が話した通り、道路の至る所にモーテルがあった。
アメリカには1つのチェーンで1000〜5000店舗を持つ巨大モーテルチェーンが10もあるなど、全米のモーテル施設数は日本のコンビニよりもはるかに多いということが分かった。
それだからこそ、アメリカ人は車で旅行しながら「今日はこの辺に泊まろう」という感じで旅行できる。特に印象深かったのはアメリカ人の老後の楽しみ方。「老夫婦が週や月単位でモーテルを利用して泊まり歩くというスタイルがごく普通に行われている」(甲斐さん)ことだった。そして帰国後、日本でもアメリカのように気ままなドライブ旅行をしながら泊まれるような宿泊施設を作ろうと旅籠屋を開業したのである。
そんなアメリカ人的な旅行の楽しみ方が最近、「日本でも広がりを見せている」と甲斐さんは話す。旅籠屋の常連利用客の中には例えば、マイカーで山口から青森まで何日もかけてのんびりドライブしたり、四国のお遍路さんが巡る同じ道を旅する夫婦もいるという。明日はどこに行くのか決めずに、宿泊場所だけを決めてその周辺にある温泉やレストランなどを利用するという自分流の旅行スタイルを好む人たちだ。「そういう人たちが口コミで旅籠屋を利用することが多い」と甲斐さん。これまで、「ラブホテルと誤解されたくない」ため、すべて直営で店舗展開を図ってきた。
日本で初めて素泊まりタイプのロードサイドホテルチェーンを成功させた甲斐さんのチャレンジ精神に対し昨年秋、東京商工会議所から「勇気ある経営大賞・優秀賞」が贈られた。そんな甲斐さんの目標は、各都道府県に数カ所の店舗を展開すること。シンプルで自由な旅と暮らしが日本でもっと増えることを願っている。 |
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