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東日本大震災 生保業界も…被災者対応急げ! FPの安田まゆみさん |
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「生保は情報の周知不足で保険金の未請求が出ないようにしてほしい」と訴える安田さん |
東日本大震災から2カ月がたとうとしている。災害に遭った時にその後の生活の支えとなるのが生命保険。しかし、被災者は避難先での生活に追われ、保険料払い込みや確認の照会などを行う余裕はないのが実情だ。ファイナンシャルプランナー(FP)の安田まゆみさんは、「こんな時こそ、生命保険会社は保険料が払えない被災者を対象に、保険継続の新たな仕組み作りなどを実現してほしい」と訴える。
保険料を分割に 特例は周知徹底 巡回相談進めて
安田さんは最近、さいたまスーパーアリーナで被災地から避難してきた女性たちの聞き取り調査を行った。その経験を踏まえて思ったのは、「生命保険会社がもっと積極的に動いてほしい」ということだと話す。「生命保険会社は、請求を受け保険金を払うのが大原則。しかしこんな状況の時には特別な配慮による仕組み作りと共に、それら新たな仕組みの徹底した告知が必要です」
もちろん、生保会社も今回の大震災に際してただ手をこまぬいているわけではない。
生保47社が加盟する(社)生命保険協会は大震災翌日の3月12日に被災者への特別な取り扱い策を発表。(1)生保各社は保険料の払込猶予期間を設けているが、申し出るとこれを最長6カ月間延長する(2)申し出により保険証券などの必要書類を一部省略するなど簡易迅速な取り扱いを行う—と決めた。
「しかし」と安田さんは言う。「(支払い猶予で)一定期間保険金支払いを延長しても猶予期間が終了するとまとめて払わなくてはいけません」。被災者の経済的な復興のめどが立たない中で現実には猶予期間の保険料を一括して払えないケースも増えてくると予想されるが、猶予期間を過ぎて保険料が未納だと保険契約は失効する。
このため安田さんは被災者の支払いについては、「一部の会社は、猶予期間が過ぎた後も一括、または分割で支払えるようになってきましたが、生保全体として足並みをそろえてほしい」と言う。また、保険継続の意思があっても保険料が支払えない被災者は、猶予期間中でも保険料の減額や保険契約の変更は可能だが、そのことをもっと積極的に被災地の契約者に告知すれば失効の減少につながる、と指摘する。
生保各社は今回の大震災により被災地で死亡した人のリストと生保業界の契約者リストをデータベース化したり、独自に安否確認を行っている。業界団体の生保協会でも、保険金や給付金請求の時効(3年)を事実上撤廃するなどの特別措置を決めている。
ただ、こうした保険関係の必要な情報がテレビや新聞、あるいはパソコンに接する機会がまだ少ない被災地の人たちには十分に周知徹底されているとは言い難い。それには、「被災地や避難所への巡回相談や車による移動相談所の設置が有効」と安田さん。
特に問題なのは両親が亡くなって残された未成年の子どもたち。両親がどこの生保会社に加入していたか分からない場合、生命保険協会の災害地域生保契約照会センター(フリ─ダイヤル0120・001731)に問い合わせるのも一案。そうすると同センターが窓口になって加盟会社に生保契約の有無について調査を依頼する。
「両親を亡くした子どもの場合、同センターに照会することをお勧めします」と安田さん。「その上で、子どもの将来のために今、保険請求が必要かどうかを、周りの大人たちが十分に考えてあげてほしい」と話す。保険給付金が子どものため以外に流用されることが危惧されるからだ。安田さんは4月19日に生保協会を訪ね、要望書を手渡した。
なお、生保各社は被災者への対応を検討している最中で、今後、新たな対応策が出てくる可能性がある。生保協会のホームページには、「災害地域生保契約照会制度に関するQ&A」も掲載されているので、参考にしてみよう。 |
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